2016年07月19日

よいこの毒草入門・4 アサガオ

こんにちは。ほぼ1ヶ月ぶりの「よいこの毒草入門」、
今回は「日本の夏の風物詩」とでもいうべき、
朝顔を取り上げたいと思います。

朝顔というと、初夏から夏にかけて、
下町の裏長屋や、築60年強・木造・風呂なし・トイレ、台所共用、
といったアパートの二階のベランダの物干竿で揺れている、
酒屋さんのロゴ入りタオルの横でよく咲いていた物ですが、
最近はそういう昭和な風景になかなかお目にかかれなくなって寂しい物です。

3832844757869215217.jpg

そんな事はどうでもいいのですが、
まぁ要は、それだけ日本の風景に溶け込んでいると言う事を
言いたかっただけです。

朝顔.jpg

ですがこの朝顔、実は日本の花ではありません。
もとは奈良時代に、中国から薬草として伝来した物なのです。

話はまた逸れますが、「薬草」と「毒草」というのは、
本当に紙一重、と言うか同じ物と言ってもいいくらいで、
第一回目で取り上げたチョウセンアサガオはぜんそくの妙薬ですし、
世界で初めて全身麻酔による乳癌の手術を、
しかも奥さんを実験台にして行った事で有名になった、
華岡青洲が用いた麻酔薬もチョウセンアサガオから作られた物です。

また、二回目で取り上げた福寿草も、強心、利尿作用があります。

で、朝顔にはどういう作用があるのかと言うと、
「瀉下作用」、要は強烈な下剤としての作用です。

そしてその薬効、というか毒性は、種にしかありません。

またまた話が逸れますが、タイなんかでは、
朝顔の葉や茎のフライにレモン汁をかけてバリバリ食べています。
紅葉の天ぷらみたいでさぞ美味しい事でしょう。
俳優の風間トオルは、子どもの頃、極貧で、
公園の石やカマキリなどを食べたりしていたそうですが、
当然アサガオももりもり食べたことがあり、
「紫が一番甘い」と言っておられました。
なんとなくわかるような気がします。
また最近では、ダイエット茶などに朝顔の葉が
ブレンドされているものすらあります。
これがチョウセンアサガオの葉なんかだと、
どえらい事になりそうですねアハハハハ。


・・・朝顔の話に戻ります。

中国から伝来した頃、朝顔は、牽牛子(けんごし)と言われていました。
この名前の由来にも諸説あって、下剤として朝顔の種を
牛に引かせて売り歩いていたからだとか、
朝顔の種で病気を治した人が、お礼に牛を貰って
それを引いて帰ったからだとか言われていますが、
そんな頃の話の真偽などわかろうはずもありませんので
無視して話を進めます。

朝顔の種にはファルビチンと言われる樹脂配糖体が含まれていて、
誤って食べると激しい腹痛とともに、強烈な下痢を起こします。

81601e27.jpg

ではどれくらいの量を食べるとヤバいのかというと、
大人で0.3グラム(約七粒)とのことですが、
よっぽどの間抜けでもない限り、朝顔の種を七粒も食べる事はないでしょう。
多分コレは、脱水症状を起こして「ちょっとヤバいんじゃない ? 」
という程の激しい下痢を引き起こす量だと思います。

とはいえ、少量(一、二粒)でも下痢や腹痛は起こします。

これからの季節、咲き終わった朝顔の種を見かけることも
多くなると思いますが、間違ってもミックスナッツの皿や、
ドライフルーツの入ったシリアルの袋などに
朝顔の種をうっかり混ぜたりしないよう、
注意していただきたいものです。
ラベル:毒草 園芸 小説 朝顔
posted by 和矢 at 04:11| Comment(0) | 園芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月19日

よいこの毒草入門・3 スズラン

先月は一度しかこちらのブログを更新していませんでしたが、
5月は、スズランに関する、とてもロマンチックな風習がある事を
忘れていました。

それにちなんで、今回は「よいこの毒草入門・3」
ということで、スズランを取り上げたいと思います。

冒頭に書いた「ロマンチックな風習」ですが、
イギリスやフランスでは、5月1日が
「ミューゼの祭日(スズランの日)」とされており、
この日に恋人や大切な友人にスズランを贈る風習があるそうです。

日本でスズランと言えば北海道、というイメージがありますが、
最近は自生している物も少なく、花屋さんなんかで売られている物は、
ほとんどがドイツスズランだそうです。

で、このスズランですが、大きな緑の葉に隠れるように、
可憐な白い花を咲かせる、もうとっても可愛いお花ですよね。

その様子から、スズランという名前の他に
「君影草」などというロマンチックな別名もありますし、
海外では「聖母の涙」「谷間の姫百合」などとも呼ばれています。
花言葉も「幸福が訪れる」「純潔」など、とってもロマンチックです。

スズラン(君影草.JPG

まあそんな事はこのコーナーではどうでもいいんですが、
この可憐で美しく、聖母の涙とまで呼ばれるスズランには、
コンバラトキシンやコンボラマリンなどが、
全草にたっぷりと含まれています。

これらの成分は、うっ血性心不全に処方される強心剤に含まれている物で、
強心剤に使われるものです。

強心剤に使われる成分というのは、量を間違えれば命取りになるワケで、
もちろんスズランの成分も例外ではありません。

むかつき、悪寒などから始まり、意識混濁、
そして最悪の場合、心臓が痙攣を起こし死に至ります。

これらの成分は前述のように、全体に渡って含まれているのですが、
特に花と果実に多く含まれています。

が、いくら毒性が強いとはいえ、
スズランの花や実を食べる人はいないでしょうから安心ですね。
でも、鉢植えなどはいいとして、スズランを活ける時は気をつけて下さい。

スズランを活けてあった水を飲んで中毒を起こし、
死んでしまったという事故は決して少なくないのです。

c0190976_0112060.jpg

このように、スズランを綺麗なガラスコップに活けるのは、
見た目も涼しげでいいものですが、
その後、その水だけをテーブルの上に放置しておいたり、
冷蔵庫に入れておいたり、氷を浮かべてみたりするのは事故のもとです。

また、先ほど果実などを食べる事はない、と書きましたが、
スズランの果実は、さくらんぼやベリー系の果実と似ています。

PHOT0000000000128C94_500_0.jpg

さくらんぼなどの中にさりげなく混ぜておいたりすると、
誤って誰かが食べてしまう危険もありますので、
そういう場所に果実を混入するのは絶対にやめましょうね。
posted by 和矢 at 23:02| Comment(0) | 園芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月19日

よいこの毒草入門・2 福寿草

こんにちは。1ヶ月ぶりの「よいこの毒草入門」です。

今回は、冬の花、ということで「福寿草」を
取り上げてみたいと思います。

「福寿草」というと、お正月に床の間に飾ったり、
松や梅と寄せ植えにして玄関に飾ったりするおめでたい花ですね。
「難を転じる」という「南天」とセットで、
「難を転じて福となす」と、縁起ものの飾りにされたりもします。

なんてったって名前からして「福」で「寿」な「草」なんですから、
めでたくないはずがありません。めでたさ炸裂です。

また、田舎の山なんかにも自生しており、
雪の下からひょこっと黄色い花を覗かせる様は、
可憐な美しさとともに、たくましさをも感じさせますね。

fuk2.jpg

かの小林一茶もその姿を「大雪を かぶつて立や 福寿草」と詠んでいます。

この福寿草、学名というか英語では ADONIS と言います。

ちょっと話がそれますが、アドニスというと、
ギリシア神話に登場する美少年の名前ですね。
キプロスの女王ミュラが、父親と交わり生まれた子供といわれますから、
近親相姦で生まれたことになりますが、
これはまぁ神話の世界ではよくある話です。

でまぁ、美の女神アフロディーテと冥界の女神ペルセフォネーが
アドニスくんを巡って女の闘いを繰り広げたため、
困ったゼウス神が

「んじゃまぁ一年のうち四ヶ月は地上でアフロディーテと、
あとの四ヶ月は冥界でペルセフォネーと、
そんで残りの四ヶ月は自分の好きなトコで過ごしたらよろし」


というわかったようなわからんようなお裁きを申し渡したと言う、
ま、それくらいの美少年だったわけです。

ちなみに彼の最期はイノシシに突き殺され、
その血からアネモネが咲き、
彼の死をいたんだアフロディーテの涙から薔薇が咲いた、
などとも言われています。

という事は、薔薇よりも福寿草の方が起源は古いのか、
という話になりますが、そんなことわかりません。

福寿草.jpg

で、このおめでたい福寿草なんですが、
草の全体に
 
シマリン、シマロール、アドニトキシン(adonitoxin)、
ソマリンの他、コルコロサイドA、コンバラトキシン、
ストロファンチン、リネオロン、イソリネオロン、アドニライド、
ウンベリフェロン、スコポレチン
 

などなど、様々な有毒成分が含まれています。

特に危険なのはアドニトキシンとシマリンで、
これは直接心臓に作用します。

特に根っこに多く含まれているため注意が必要ですが、
普通根っこを間違って食べるということはあまりないでしょう。

ただ、福寿草の始末の悪いところは、
花の前はフキノトウにそっくり、
花が終わった後の葉っぱはヨモギにそっくり
だということです。

福寿草の花は、2月の旧正月頃から咲き始め、
そろそろ花が終わるころです。

山菜を摘みに行って、葉っぱだけになった福寿草の葉を
ヨモギと間違えて、しこたま摘んで来てしまい、
お浸しにして食べたりしたら、どえらいことになります。

どれくらいどえらいことか、参考までに致死量をあげておきますと、
0.7mg/kgといわれています。
つまり42mgあれば体重 60kgの成人が死亡するワケです。

中毒の仕方としては、まず気分が悪くなって嘔吐し、
ついで心不全で死に至る、というパターンです。

また、植え替えなどの作業中に、粒子を大量に吸い込んでしまっただけでも
軽い悪心や嘔吐などの中毒を起こす事もあるそうですから、
お家で栽培している場合、手袋やマスクをするなど、
くれぐれも注意してかかってください。

間違っても、ヨモギ餅ならぬ福寿草餅なんか作ってはいけませんよ〜!
posted by 和矢 at 00:20| Comment(0) | 園芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする