2016年04月09日

『青の炎』ネタバレあり

ここのところ、「よいこの毒草入門」だとか
「飼いゾンビ日記」だとか、眉をひそめられるような内容の
ものばかりを書いていたので、久し振りに本のレビューなんぞを。

貴志祐介の『青の炎』です。

いきなり話が飛びますが、人との出会いというのは面白いもので、
ぼくと貴志祐介という作家との出会いは、もう十年以上も前のこと。

映画『 ISOLA 十三番目の人格』の原作者として、でした。

ただ、原作を読むには至らずでしたので、正確には名前を知った程度の
出会い方です。

そして、長い年月が経ち、たまたま映画『悪の教典』を観たぼくは、
サイコパスの教師、蓮実聖司、通称ハスミンの虜となり、
「どういう人間が、こんな人物を生み出したのだろう」と
原作を読み、あっという間に貴志祐介のファンになったのです。

というワケで、今回は『青の炎』

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この小説は、『悪の教典』と同じように、犯罪者目線で描かれています。
が、決定的な違いは、主人公が高校生であり、
犯罪の動機が「大切な人を守ること」であることでしょう。

もちろん、彼はサイコパスではありませんから、犯行に至る前の葛藤、
犯行後の後悔、などが、非常にリアルに描かれています。

いまどきの高校生であり、ちょっとばかり生意気で、繊細な主人公には
「忘れていたけど、高校時代って、自分もこんな風にイキってたよな〜」と、
しっとりと感情移入が出来ました。

また、主人公の犯罪の動機が
「大切な人を守り、以前と同じような、平和な生活を取り戻すこと」
であったとしても、いったん犯罪を犯してしまった以上、
たとえその罪が発覚しなかったとしても、
自分自身が以前と同じ人間ではなくなってしまうわけです。

決して以前と同じ生活は戻ってこないんですよ。

主人公自身、それがわかったうえで、それでも犯罪という
手段を選んでしまうところ、余計に切なく感じます。

読んでいる最中に知ったんですが、この作品も
映画化されていたんですね。

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青の炎

主役は「嵐」の二宮和也、ニノです。
2003年の作品なので、彼が19歳の頃の映画。

原作を読み終わって、早速観てみたんですが、
これがまたすごく良かったです。

二宮くんの、繊細で、ちょっとすねたような感じが、
主人公にピッタリ。

また、東儀秀樹の音楽も泣かせてくれます。

原作にはない、主人公のモノローグのフェードアウトで
映画は静かに終わります。
この静かな終わり方がねー、切ないんです。

これ以外のラストはないんだろーなーとわかってはいても、
やっぱり切ない。

小説が良ければ映画は見劣りしてしまうケースが多いですが、
この作品に関しては、ぼくは好きです。

雨の日に観るのがいいかな。。。
posted by 和矢 at 03:42| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月19日

よいこの毒草入門・2 福寿草

こんにちは。1ヶ月ぶりの「よいこの毒草入門」です。

今回は、冬の花、ということで「福寿草」を
取り上げてみたいと思います。

「福寿草」というと、お正月に床の間に飾ったり、
松や梅と寄せ植えにして玄関に飾ったりするおめでたい花ですね。
「難を転じる」という「南天」とセットで、
「難を転じて福となす」と、縁起ものの飾りにされたりもします。

なんてったって名前からして「福」で「寿」な「草」なんですから、
めでたくないはずがありません。めでたさ炸裂です。

また、田舎の山なんかにも自生しており、
雪の下からひょこっと黄色い花を覗かせる様は、
可憐な美しさとともに、たくましさをも感じさせますね。

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かの小林一茶もその姿を「大雪を かぶつて立や 福寿草」と詠んでいます。

この福寿草、学名というか英語では ADONIS と言います。

ちょっと話がそれますが、アドニスというと、
ギリシア神話に登場する美少年の名前ですね。
キプロスの女王ミュラが、父親と交わり生まれた子供といわれますから、
近親相姦で生まれたことになりますが、
これはまぁ神話の世界ではよくある話です。

でまぁ、美の女神アフロディーテと冥界の女神ペルセフォネーが
アドニスくんを巡って女の闘いを繰り広げたため、
困ったゼウス神が

「んじゃまぁ一年のうち四ヶ月は地上でアフロディーテと、
あとの四ヶ月は冥界でペルセフォネーと、
そんで残りの四ヶ月は自分の好きなトコで過ごしたらよろし」


というわかったようなわからんようなお裁きを申し渡したと言う、
ま、それくらいの美少年だったわけです。

ちなみに彼の最期はイノシシに突き殺され、
その血からアネモネが咲き、
彼の死をいたんだアフロディーテの涙から薔薇が咲いた、
などとも言われています。

という事は、薔薇よりも福寿草の方が起源は古いのか、
という話になりますが、そんなことわかりません。

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で、このおめでたい福寿草なんですが、
草の全体に
 
シマリン、シマロール、アドニトキシン(adonitoxin)、
ソマリンの他、コルコロサイドA、コンバラトキシン、
ストロファンチン、リネオロン、イソリネオロン、アドニライド、
ウンベリフェロン、スコポレチン
 

などなど、様々な有毒成分が含まれています。

特に危険なのはアドニトキシンとシマリンで、
これは直接心臓に作用します。

特に根っこに多く含まれているため注意が必要ですが、
普通根っこを間違って食べるということはあまりないでしょう。

ただ、福寿草の始末の悪いところは、
花の前はフキノトウにそっくり、
花が終わった後の葉っぱはヨモギにそっくり
だということです。

福寿草の花は、2月の旧正月頃から咲き始め、
そろそろ花が終わるころです。

山菜を摘みに行って、葉っぱだけになった福寿草の葉を
ヨモギと間違えて、しこたま摘んで来てしまい、
お浸しにして食べたりしたら、どえらいことになります。

どれくらいどえらいことか、参考までに致死量をあげておきますと、
0.7mg/kgといわれています。
つまり42mgあれば体重 60kgの成人が死亡するワケです。

中毒の仕方としては、まず気分が悪くなって嘔吐し、
ついで心不全で死に至る、というパターンです。

また、植え替えなどの作業中に、粒子を大量に吸い込んでしまっただけでも
軽い悪心や嘔吐などの中毒を起こす事もあるそうですから、
お家で栽培している場合、手袋やマスクをするなど、
くれぐれも注意してかかってください。

間違っても、ヨモギ餅ならぬ福寿草餅なんか作ってはいけませんよ〜!
posted by 和矢 at 00:20| Comment(0) | 園芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月27日

飼いゾンビ日記・3 ぬめ男とお散歩

 前に日記を書いたのは2月の初頭だから、
もう一月近く経ってしまった事になる。
 
 ぬめ男は、僕に回し蹴りをくらわされたのがよっぽど怖かったらしく、
しばらくは僕の顔を見るとびびっていたようだが、もうすっかり元通りだ。
 僕も、お母さんにこっぴどく叱られてしまった。
 多分、ぬめ男がかわいそうだからじゃなくて、
裂けた脇腹に腸を押し込んで縫うのが大変だったからだろうけど。

 今日は少し暖かかったので、夕方、久し振りにぬめ男と散歩に出かけた。
ゾンビに運動は必要ないので、わざわざ散歩させる必要もないんだけど、
そこはペットとのコミュニケーションというヤツだ。

 最近ではゾンビをペットにしている人も増え、公園や川岸を歩いていると、
首輪とハーネスをつけたゾンビと一緒に歩いている人をよく見かける。
 
 そういう人とは、年が離れていても、初対面でも、
なんだか仲間のような気がするから不思議だ。

 自然と「こんにちは」という言葉が出てくるし、
世間話やゾンビの飼い方について情報交換が出来たりする。
ゾンビ同士がじゃれあったりすることもある。

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 少し前、腰の曲がったおばあさんが、三十代半ばくらいのオスのゾンビと
公園のベンチで休んでいたので、こんなおばあさんがゾンビを飼っているなんて
珍しいなぁと思いながら話を聞いてみた。

 なんでも、そのおばあさんの息子さんが事故にあって亡くなってしまったため、
おばあさんは息子さんと年格好の似たゾンビに、息子さんの名前をつけ、
暮らし始めたのだそうだ。

「いまはこの子がいてくれるから寂しさもまぎれてますけどねぇ、
この子と出会わなかったら、今頃わたし、どうなっていたことやら・・・」

 おばあさんは、エプロンのポケットから、万国旗を取り出す手品師のように
ずるずると豚の腸を取り出して、そのゾンビにあげながら、
そう言って寂しそうに笑った。そして、ぬめ男にも、豚足を分けてくれた。
 
 そうか・・・ペットを飼うにはいろんな理由があるけれど、
ゾンビはもとが人間なだけに、こんな人もいるんだなぁと思うと、
僕はもっともっとぬめ男をかわいがってあげなくちゃ、という気持ちになった。

 亡くなった息子さんの代わりに、ゾンビに息子さんの名前をつけて飼うのは、
正直、少しどうかとも思ったけど、息子さんが自分より先に死んでしまうという事は、
僕なんかには想像もつかないほどつらい事なんだろうな・・・。
 
 そのおばあさんとゾンビ(満という名前だそうだ)には、
それからも時々公園などで会う。
 今日は会わなかったけれど、今でもふたり仲良く、
この街のどこかでひっそりと暮らしているんだろう。

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 ぬめ男とふたり、僕たちの街を見下ろす高台の公園で夕陽を眺めながら、
ふとそんなことを思った。

posted by 和矢 at 02:13| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする