2016年03月19日

よいこの毒草入門・2 福寿草

こんにちは。1ヶ月ぶりの「よいこの毒草入門」です。

今回は、冬の花、ということで「福寿草」を
取り上げてみたいと思います。

「福寿草」というと、お正月に床の間に飾ったり、
松や梅と寄せ植えにして玄関に飾ったりするおめでたい花ですね。
「難を転じる」という「南天」とセットで、
「難を転じて福となす」と、縁起ものの飾りにされたりもします。

なんてったって名前からして「福」で「寿」な「草」なんですから、
めでたくないはずがありません。めでたさ炸裂です。

また、田舎の山なんかにも自生しており、
雪の下からひょこっと黄色い花を覗かせる様は、
可憐な美しさとともに、たくましさをも感じさせますね。

fuk2.jpg

かの小林一茶もその姿を「大雪を かぶつて立や 福寿草」と詠んでいます。

この福寿草、学名というか英語では ADONIS と言います。

ちょっと話がそれますが、アドニスというと、
ギリシア神話に登場する美少年の名前ですね。
キプロスの女王ミュラが、父親と交わり生まれた子供といわれますから、
近親相姦で生まれたことになりますが、
これはまぁ神話の世界ではよくある話です。

でまぁ、美の女神アフロディーテと冥界の女神ペルセフォネーが
アドニスくんを巡って女の闘いを繰り広げたため、
困ったゼウス神が

「んじゃまぁ一年のうち四ヶ月は地上でアフロディーテと、
あとの四ヶ月は冥界でペルセフォネーと、
そんで残りの四ヶ月は自分の好きなトコで過ごしたらよろし」


というわかったようなわからんようなお裁きを申し渡したと言う、
ま、それくらいの美少年だったわけです。

ちなみに彼の最期はイノシシに突き殺され、
その血からアネモネが咲き、
彼の死をいたんだアフロディーテの涙から薔薇が咲いた、
などとも言われています。

という事は、薔薇よりも福寿草の方が起源は古いのか、
という話になりますが、そんなことわかりません。

福寿草.jpg

で、このおめでたい福寿草なんですが、
草の全体に
 
シマリン、シマロール、アドニトキシン(adonitoxin)、
ソマリンの他、コルコロサイドA、コンバラトキシン、
ストロファンチン、リネオロン、イソリネオロン、アドニライド、
ウンベリフェロン、スコポレチン
 

などなど、様々な有毒成分が含まれています。

特に危険なのはアドニトキシンとシマリンで、
これは直接心臓に作用します。

特に根っこに多く含まれているため注意が必要ですが、
普通根っこを間違って食べるということはあまりないでしょう。

ただ、福寿草の始末の悪いところは、
花の前はフキノトウにそっくり、
花が終わった後の葉っぱはヨモギにそっくり
だということです。

福寿草の花は、2月の旧正月頃から咲き始め、
そろそろ花が終わるころです。

山菜を摘みに行って、葉っぱだけになった福寿草の葉を
ヨモギと間違えて、しこたま摘んで来てしまい、
お浸しにして食べたりしたら、どえらいことになります。

どれくらいどえらいことか、参考までに致死量をあげておきますと、
0.7mg/kgといわれています。
つまり42mgあれば体重 60kgの成人が死亡するワケです。

中毒の仕方としては、まず気分が悪くなって嘔吐し、
ついで心不全で死に至る、というパターンです。

また、植え替えなどの作業中に、粒子を大量に吸い込んでしまっただけでも
軽い悪心や嘔吐などの中毒を起こす事もあるそうですから、
お家で栽培している場合、手袋やマスクをするなど、
くれぐれも注意してかかってください。

間違っても、ヨモギ餅ならぬ福寿草餅なんか作ってはいけませんよ〜!
posted by 和矢 at 00:20| Comment(0) | 園芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月27日

飼いゾンビ日記・3 ぬめ男とお散歩

 前に日記を書いたのは2月の初頭だから、
もう一月近く経ってしまった事になる。
 
 ぬめ男は、僕に回し蹴りをくらわされたのがよっぽど怖かったらしく、
しばらくは僕の顔を見るとびびっていたようだが、もうすっかり元通りだ。
 僕も、お母さんにこっぴどく叱られてしまった。
 多分、ぬめ男がかわいそうだからじゃなくて、
裂けた脇腹に腸を押し込んで縫うのが大変だったからだろうけど。

 今日は少し暖かかったので、夕方、久し振りにぬめ男と散歩に出かけた。
ゾンビに運動は必要ないので、わざわざ散歩させる必要もないんだけど、
そこはペットとのコミュニケーションというヤツだ。

 最近ではゾンビをペットにしている人も増え、公園や川岸を歩いていると、
首輪とハーネスをつけたゾンビと一緒に歩いている人をよく見かける。
 
 そういう人とは、年が離れていても、初対面でも、
なんだか仲間のような気がするから不思議だ。

 自然と「こんにちは」という言葉が出てくるし、
世間話やゾンビの飼い方について情報交換が出来たりする。
ゾンビ同士がじゃれあったりすることもある。

 gahag-002695.jpg

 少し前、腰の曲がったおばあさんが、三十代半ばくらいのオスのゾンビと
公園のベンチで休んでいたので、こんなおばあさんがゾンビを飼っているなんて
珍しいなぁと思いながら話を聞いてみた。

 なんでも、そのおばあさんの息子さんが事故にあって亡くなってしまったため、
おばあさんは息子さんと年格好の似たゾンビに、息子さんの名前をつけ、
暮らし始めたのだそうだ。

「いまはこの子がいてくれるから寂しさもまぎれてますけどねぇ、
この子と出会わなかったら、今頃わたし、どうなっていたことやら・・・」

 おばあさんは、エプロンのポケットから、万国旗を取り出す手品師のように
ずるずると豚の腸を取り出して、そのゾンビにあげながら、
そう言って寂しそうに笑った。そして、ぬめ男にも、豚足を分けてくれた。
 
 そうか・・・ペットを飼うにはいろんな理由があるけれど、
ゾンビはもとが人間なだけに、こんな人もいるんだなぁと思うと、
僕はもっともっとぬめ男をかわいがってあげなくちゃ、という気持ちになった。

 亡くなった息子さんの代わりに、ゾンビに息子さんの名前をつけて飼うのは、
正直、少しどうかとも思ったけど、息子さんが自分より先に死んでしまうという事は、
僕なんかには想像もつかないほどつらい事なんだろうな・・・。
 
 そのおばあさんとゾンビ(満という名前だそうだ)には、
それからも時々公園などで会う。
 今日は会わなかったけれど、今でもふたり仲良く、
この街のどこかでひっそりと暮らしているんだろう。

夕焼けの街.jpg

 ぬめ男とふたり、僕たちの街を見下ろす高台の公園で夕陽を眺めながら、
ふとそんなことを思った。

posted by 和矢 at 02:13| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月05日

飼いゾンビ日記 その2

 朝、目が覚めたら、体中にびっしょりと汗をかいており、
起き上がろうとしても体に力が入らず、倒れ込んでしまった。

 昨日から寒気がしていたのだが、
どうやら本格的に風邪をひいてしまったらしい。
 
 よりによってこんな時に風邪なんて、タイミングの悪い事だ。

 お父さんは出張で昨日から留守だし、
お母さんは法事で実家に帰っており、明日まで帰ってこない。

 ぬめ男のご飯、どうしよう…

 そう思ったが、どうにも体がいう事をきかず、
僕は再び意識を失うようにして眠り込んでしまった。

 その日は結局、一日中動く事が出来なかった。
 一度トイレに行ったが、立ち上がるのがやっとという有様で、
ふらふらとトイレに行ったのはいいものの、
気分が悪くなって吐いてしまい、しばらくトイレの中でうずくまっていた。

 頭が燃えるように熱かったので熱を計ると、40度近くあったのだが、
とてもひとりでお医者さんに行けるような状態ではなかったし、
まず体が動かなかったので、とにかく僕はうんうん唸りながら
寝ているしかなかった。

 ぬめ男の事が気がかりだったが、仕方がない。

 僕はゲージの中のぬめ男に

「ごめんなぁ、今日はご飯やれないや…、
明日お母さんが帰ってくるまで我慢してくれな……」

 と、ゾンビに言葉など通じないのを承知の上で語りかけ、
また眠りに落ちた。



 次の日、僕は頭がひんやりと冷たくて心地よいのと、
顔のまわりがわんわんとうるさいのとで目が覚めた。
気分はすっかり良くなっていた。

 ふと気づくと、顔の上に、なにやら冷たいものが乗っている。
 見るとそれは、ぬめ男のエサ用に冷凍してあった豚の内蔵で、
わんわんという音は、すっかり溶けて生暖かくなったそれに、
無数のハエがたかっているのだった。

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 僕がびっくりして上半身を起こすと、顔を覆っていた腸が、
でろでろびしゃびしゃっと床に落ち、その横にぬめ男が座っていた。

 「……ぬめ男、お前……看病してくれてたのか ? 」

 そう訊いても、言葉のわからないぬめ男は無表情のままだ。
それに、ゾンビにそんな知能があるなんて聞いた事がない。
生前の記憶を頼りに、冷蔵庫を開けるくらいの事はするかもしれない。
だけど、お腹がすいて冷蔵庫からエサを出したなら、
それを食べればいいだけの話だ。
なのにそれを僕の頭の上に乗せてあったということは……。


 「ぬめ男…あ、ありがとうな……」

 僕はそれだけ呟くと、ぼんやりと焦点の合わぬ目で
虚空を見つめているぬめ男を抱きしめた。


 知能のないゾンビだって、愛情を込めて世話をすれば心が通じ合うんだ……


 僕は嬉しくて、誇らしくて、そして、何よりもぬめ男が愛おしくて仕方なかった。

 が、ふと気づくと、ぬめ男が豚の内蔵の汁まみれになった僕の首を
エサと間違えてかぶりつきそうになっていたので、咄嗟に突き飛ばして
力の限りの回し蹴りをくらわしてしまった。



ごめんな、ぬめ男。
お母さんが帰って来たら、その脇腹、縫ってもらおうな。
posted by 和矢 at 01:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする