2016年02月05日

飼いゾンビ日記 その2

 朝、目が覚めたら、体中にびっしょりと汗をかいており、
起き上がろうとしても体に力が入らず、倒れ込んでしまった。

 昨日から寒気がしていたのだが、
どうやら本格的に風邪をひいてしまったらしい。
 
 よりによってこんな時に風邪なんて、タイミングの悪い事だ。

 お父さんは出張で昨日から留守だし、
お母さんは法事で実家に帰っており、明日まで帰ってこない。

 ぬめ男のご飯、どうしよう…

 そう思ったが、どうにも体がいう事をきかず、
僕は再び意識を失うようにして眠り込んでしまった。

 その日は結局、一日中動く事が出来なかった。
 一度トイレに行ったが、立ち上がるのがやっとという有様で、
ふらふらとトイレに行ったのはいいものの、
気分が悪くなって吐いてしまい、しばらくトイレの中でうずくまっていた。

 頭が燃えるように熱かったので熱を計ると、40度近くあったのだが、
とてもひとりでお医者さんに行けるような状態ではなかったし、
まず体が動かなかったので、とにかく僕はうんうん唸りながら
寝ているしかなかった。

 ぬめ男の事が気がかりだったが、仕方がない。

 僕はゲージの中のぬめ男に

「ごめんなぁ、今日はご飯やれないや…、
明日お母さんが帰ってくるまで我慢してくれな……」

 と、ゾンビに言葉など通じないのを承知の上で語りかけ、
また眠りに落ちた。



 次の日、僕は頭がひんやりと冷たくて心地よいのと、
顔のまわりがわんわんとうるさいのとで目が覚めた。
気分はすっかり良くなっていた。

 ふと気づくと、顔の上に、なにやら冷たいものが乗っている。
 見るとそれは、ぬめ男のエサ用に冷凍してあった豚の内蔵で、
わんわんという音は、すっかり溶けて生暖かくなったそれに、
無数のハエがたかっているのだった。

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 僕がびっくりして上半身を起こすと、顔を覆っていた腸が、
でろでろびしゃびしゃっと床に落ち、その横にぬめ男が座っていた。

 「……ぬめ男、お前……看病してくれてたのか ? 」

 そう訊いても、言葉のわからないぬめ男は無表情のままだ。
それに、ゾンビにそんな知能があるなんて聞いた事がない。
生前の記憶を頼りに、冷蔵庫を開けるくらいの事はするかもしれない。
だけど、お腹がすいて冷蔵庫からエサを出したなら、
それを食べればいいだけの話だ。
なのにそれを僕の頭の上に乗せてあったということは……。


 「ぬめ男…あ、ありがとうな……」

 僕はそれだけ呟くと、ぼんやりと焦点の合わぬ目で
虚空を見つめているぬめ男を抱きしめた。


 知能のないゾンビだって、愛情を込めて世話をすれば心が通じ合うんだ……


 僕は嬉しくて、誇らしくて、そして、何よりもぬめ男が愛おしくて仕方なかった。

 が、ふと気づくと、ぬめ男が豚の内蔵の汁まみれになった僕の首を
エサと間違えてかぶりつきそうになっていたので、咄嗟に突き飛ばして
力の限りの回し蹴りをくらわしてしまった。



ごめんな、ぬめ男。
お母さんが帰って来たら、その脇腹、縫ってもらおうな。
posted by 和矢 at 01:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月02日

よいこの毒草入門 その1

いきなりですが、皆さんは毒草は好きですか?

ぼくは大好きです!

なぜ?
と訊かれても困ります。
ただ毒草が好きで、ワクワクするのです。

けれど、当たり前ですが、毒草は危険です。

そして、身近なところに、毒草は素知らぬ顔をして生えています。
名前を聞いたり、写真を見れば、必ず知っていて、
「この植物に毒が!?隣の家に生えてるよ!」
という毒草は、本当にいっぱいあります。
子どもがおままごとに使ったり、間違えて食べたりして
食中毒を起こしたり、最悪の場合、死に至ったりすることもあるのです。
そこで、趣味と実益(どんな益?)を兼ねて、
身近な毒草について書いてみようと思いたちました。
タイトルは、今日の日記のタイトルのまんま、『よいこの毒草入門』です。

たとえば今の季節でしたら、道ばたや公園で、
こんな花を見かけませんか。

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ウチの近所の空地にも咲いていますし、
職場の近所でも2ケ所ほどで咲いています。

この植物、よほど生命力が強いらしく、
前述の近所の空地で咲いているヤツは、
タールで固められた地面の隙間から、
タールを押し退けるようにしてどんどん伸びています。

また、写真のように花も綺麗で、そのうえとても良い香りがするので、
園芸用にも売られています。
ホームセンターや大きめの花屋さんなんかに行けば、
白や紫、オレンジ、ピンクなど、様々な色の苗が売られていたりします。
最近は、品種改良されて八重咲きになったものもあるようです。

この植物、その形状から、「エンジェル・トランペット」
と呼ばれています。

また、これと似た花で、上向きに咲く種類もあり、
そちらは「チョウセンアサガオ」「ダチュラ」「キチガイナスビ」
などとも言われます。
前者はともかく、最後のは放送出来ませんね。

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でも「アサガオ」とは言うものの、れっきとしたナス科の植物なので、
本当は後者の方が正しいのです。

エンジェル・トランペットも、キダチチョウセンアサガオ属
ですので、血のつながりの濃い親戚関係ですね。

で、この植物は、全体にヒオスチアミンと
アトロピンという猛毒を含んでいます。

また、花が咲き終わると、写真のような、とげとげのついた実がなり、
それがはじけて中から大きなゴマのような種が飛び出します。

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この種には、ぜんそくの発作を抑える薬や、
鎮静剤にも使われるスコポラミンが含まれていますが、
それも猛毒で、下手に種を数粒飲んでしまったりすると、
大変な事になります。

どう大変かというと、「キチガイナスビ」という名の通り、
幻覚を見たり、せん妄状態になったりするのです。

もちろん量によっては死に至ります。

葉を煎じて飲んでも、同じような効果があるらしいのですが、
その幻覚は決してドラッグのようなものではなく、
ただひたすらワケのわからないもののようです。
ただ、ドラッグとしてのダチュラを
絶賛しているサイトもありました。
とはいえ、それはもちろん法律違反ですし、
なによりどのような反応が出るかは人それぞれ。
まぁやめておいた方が無難でしょう。

おなじくナス科の「ハシリドコロ」は
別名「おめきぐさ」「おにみるくさ」などと言われますが、
これは、鬼を見るような幻覚を見て「おめく(方言で「わめく」の意)」
からだと言われています。
そこからしても、あまり楽しい幻覚が見れるワケではないようですし、
数日間もの間、意識というか、記憶がない、という事もあるようで、
ドラッグとして使用してみようなどとは考えない方がいいですね。

ただ、つぼみがオクラとそっくりなせいか、
よく誤食して中毒を起こす人がいます。
残念なことですが、亡くなる方もおられるようです。

丈夫な植物ですので、街中でも良く育ち、
立派なオクラのようなつぼみをぶら下げていますが、
間違えても、持って帰って
炒めて食べて見たりしないようにしてくださいね!
タグ:小説 毒草 園芸
posted by 和矢 at 00:37| Comment(0) | 園芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月31日

飼いゾンビ日記

 僕がはじめて「ゾンビ」という生き物を見たのは、
小学校6年生の時、 当時高校生だった姉の友人が
家に連れて来たのを見たのが最初だと思う。
 
 夕飯の準備に忙しい母の代わりに、ジュースと豚足を持って姉の部屋に行くと、
首輪をつけたゾンビがいたのだ。
 その頃は今と違い、愛玩ゾンビを飼っている人はまだまだ珍しかったので、
すごく興奮したのを覚えている。

 そのゾンビは「まんじろう」という名で、とてもよく懐いていた。

 僕が豚足をやると、器用に両手でそれを持ち、
姉たちの真似をして、ガツガツと貪り喰った。
 手や唇を脂まみれにし、さらには皮や脂の塊を
びちびちと周囲に飛び散らせながらも
無心に骨までしゃぶりつくすその愛らしい姿に、
僕は一目惚れしてしまったのだ。

 とはいえ、小学生の僕に、家人がゾンビなどを買い与えてくれるはずもなく、
仕方がないので、僕は休みの日になると、本屋さんのペットコーナーで、
『ゾンビの飼い方』『カワイイ ! ゾンビと暮らす』『ゾンビの衣食住』
『愛玩ゾンビの楽しみ』『ルームメイトはゾンビ♪』など、
様々なゾンビの本を読んで過ごした。

 いま思えば、かわいいからと言って衝動的に飼い始めるより、
そうしていろいろ知識を蓄えておいて良かったと思う。
 ファームによるゾンビの性質の違い、
梅雨から夏の期間にしなければならない防腐処置、
必要な檻のタイプ、散歩のさせ方など、
高校生になる頃には、僕はいっぱしのゾンビ博士になっていた。
 両親も僕の熱意に負け、高校入学祝いとして、
僕はゾンビを買ってもらえる、いや、こういう言い方は好きじゃない、
「飼わせてもらえる」ことになった。

 僕は両親とともにゾンビを扱っているペットショップに行き、
生体よりも先に、エサにまぜるタイプの消臭剤、
躾用のスタンガンなどを購入し、その後で生体を選ぶことにした。

 種類や性別は決めていたので、ロメロファームのオスを見せてもらう。

 前述のように、一口にゾンビといっても、
出身ファームによって生態や性格はかなり違うのだ。
たとえば、ライミファームのゾンビは、
イタズラ好きで行動も活発だが、やや上級者向けだ。

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ライミファームのゾンビ。活発だけど、その分脱走率も高いし、
飼い主にいたずらを仕掛けて来ることも多い。


また、フルチファームのものは、湿気の多い日本向けではない。

オバノンファームのものは、生身の人間に近いものから、
ミイラのようなものまで、多岐に渡っているが、
行動が活発すぎるうえ、エサとして脳味噌しか食べないため、
お金もかかるし、マニア向けだ。

その点、ロメロファームのものは、動きも緩慢で人に慣れやすく、
何よりも老舗なので安心できる。

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ロメロファームでは、このように散歩をさせたりして
ゾンビの健康にも気を使っている。


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さらに、音楽を聴かせたりして、情操教育にも
力を入れているのだ。


 一目見て気に入った三十代オスの生体がいたので、それに決め
(ペットを選ぶ時に一番大切なのは、やはりひらめきだ)、
サイズのあうハーネスや檻を買い、予防接種済みの証明書と、
ロメロファームのものである事を証明する書類をもらって家に帰る。

 父は「これじゃあどちらが飼い主かわからんなぁ」
などと言って笑っているし、母は「結婚した頃のお父さんみたい」
などと言って上機嫌だ。どうやら両親も気に入ってくれたらしい。
 名前は、ずっと前から決めていた「ぬめ男」にする。

 明日から、僕とぬめ男との生活が始まるんだ・・・。

 そう思うと、ぼくの心はどうしようもない喜びと、
胸がはずむような感覚に満たされた。

        つづく
posted by 和矢 at 01:41| Comment(0) | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする